患者さんから地域へ。
高レベルの地域包括ケアで社会課題を解決する
高齢者医療をワンチームで実現する難しさ
老年医学や高齢者ケアを学んだ米国留学を通じて、医療と介護、社会福祉がワンチームとなり高齢患者さんをサポートする仕組みとその素晴らしさを知りました。日本でも同様のチームケアを実現したいと思い帰国。老人ホームに就職しましたが、壁は想像以上に高く、多職種が強く連携することの難しい現実にぶちあたりました。思い描いた理想を実現できないもどかしさを抱えていた時、『やまと』に出会いました。志の高い医師が集まり、良いことや正しいことを追及する姿勢に、「ここでなら新しいことを実現できるかもしれない」と『やまと』で働くことを決意しました。
患者さんの人生を、最後に全肯定する
『やまと』で在宅医療に関わる中で私が大切にしていることは、とにかく「安心してもらうこと」。医師という仕事柄、「大丈夫」という言葉を患者さんやご家族にかけることに抵抗感がゼロと言えば嘘になります。しかし在宅ケアの場面では「これからどうなっていくのか?」「正しいことをしているのか?」と不安に思っている人が多いので、あえて私は、「どんな状況になっても我々がついていますから大丈夫ですよ」という意味で「大丈夫」という言葉を使っています。
「いいことがあまりなかった長い人生だったけど、最期に先生に出会えたのは良かった!」と言っていただいたことがあります。余命を延ばすことは難しいですが、与えられた残りの時間の質を高めうるサポートをすることは可能です。患者さん一人ひとりの人生の最終章に丁寧に向き合えるのは『やまと』ならではだと感じています。
患者さんを取り巻く地域までアプローチを拡げる
『やまと』に入って痛感したことがあります。それは、在宅ケアというのは患者さんその人だけを診れば良いわけではないということ。患者さんは、ご自身を取り巻く周囲の人たちや地域から常に影響を受けています。その影響により心身の状態が悪くなることもあれば良くなることもあります。たとえば、お母様の「老い」を受け入れられず、高齢の彼女を日々叱咤激励していた娘さんたちがいました。「こんなこともできなくなっちゃって」とどんどん沈んでいく母親。変わったきっかけは娘さんたちへのアプローチでした。多職種ケアチームとの関わりや地域の勉強会への参加などを促したところ、彼女たちの母親への接し方が変わってきたのです。そして少し時間が経ったあと、娘さんたちの変化に呼応するように患者さんが元気と自信を取り戻し始めました。患者さんだけでなく、周囲や環境へのアプローチをも含めた「ケースマネジメント」。このことこそが在宅ケアのキモであると強く感じています。
地域全体を巻き込んだ仕組みづくりに挑戦
『やまと』での経験を通じて、これまではなかった視点を獲得し、視界が広がっていくのを実感しています。心身の健康状態が、患者さんを取り巻く環境や地域と深く関係していることをよりよく理解できるようになり、高いレベルの「チームケア」実現のためにやるべきことが具体化してきました。現在、私は宮城県南に新たな診療所を開業し、地域全体を巻き込んだ高齢者サポートシステムの構築に挑戦中です。まだまだ課題が山積している地域医療の復興の一助となり、消滅しつつあるコミュニティが再生することを夢見ています。在宅診療をしながら、その先の「地域創生」という社会課題に取り組む。それが『やまと』で働くことの大きな魅力です。